概要

 「源泉徴収選択口座」について、本記事では、特定口座(源泉徴収あり)と記載して解説しています。

 特定口座(源泉徴収あり)における所得の金額又は損失の金額は、株式等に係る譲渡所得等の金額又は損失の金額から除外して、その年分の確定申告を行うことができます(措法37の11の5①)。いわゆる申告不要制度の適用というものです。

 平成15年1月1日からの個人の株式譲渡益課税の申告分離課税への一本化に伴い、個人投資家の確定申告等の事務の負担の軽減に配慮する観点から設けられた制度であると解されています。

 なお、申告不要制度を適用することができるのですが、あえて、申告することもできます。申告不要制度の適用を受けるか否かの選択は納税者に委ねられていると解されています。

 平成18年5月30日裁決(東裁(所)平17第188号)では、以下のように判断しています。
「納税者が確定申告する時点において、源泉徴収選択口座で生じた上場株式等の譲渡による所得の金額又は損失の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額(譲渡損失の金額)に含めて確定申告をするか、それを除外して確定申告をするかは、納税者の選択に委ねられている(。)」

 では、申告不要制度の適用により除外して申告した場合、あるいは、申告した場合の、その後に与える影響はどのようなものになるでしょうか?

特定口座(源泉徴収あり)が複数ある場合

 数社の証券会社と契約をし、特定口座(源泉徴収あり)が複数ある方もいるでしょう。

 特定口座(源泉徴収あり)内の所得を申告するかしないかは、口座ごとに選択することができます(措通37の11の5-2)。

特定口座(源泉徴収あり)内の利益(売却益・償還差益、配当等・利子等)を確定申告する場合の注意点

 特定口座(源泉徴収あり)内の利益は、確定申告義務はありませんが、確定申告により、同一年に当該特定口座外で生じた上場株式等グループの売却損と通算(一般口座の売却損と通算可)したり、配当等について配当控除の適用を受けることにより、税金の還付等を受けることができる場合があります。

 特定口座(源泉徴収あり)内の利益を確定申告する場合、口座ごと、かつ、売却益・償還差益、配当等・利子等ごとに確定申告するかどうかを選択することができます。

 つまり、1つの特定口座(源泉徴収あり)内の譲渡所得等の黒字の金額と配当所得等の金額のいずれかのみを申告することができます。

 なお、特定口座(源泉徴収あり)内のものについては、1回の売却・償還ごと、1回に支払いを受ける配当等・利子等ごとに、確定申告するかどうかを選択することはできません。

 つまり、特定口座(源泉徴収あり)内の配当等・利子等の全てを申告する、あるいは、全てを申告しないのどちらかになるということなので、3銘柄について申告をし、2銘柄について申告不要を選択するようなことはできません(措法37の11の6⑨)。

 また、1つの特定口座(源泉徴収あり)内の配当所得と利子所得のいずれか一方のみを申告し、又は申告しないとすることはできません。

 特定口座(源泉徴収あり)の制度上、売却損が生じた場合、売却損と配当等・利子等が損益通算されますが、具体的に、どの配当等・利子等が損益通算されるのかが、構造上、判定することが困難なため、全ての配当等・利子等を適用単位とせざるをえないのです。

  特定口座(源泉徴収あり)への受入れを行っている配当であっても、申告においては、総合課税と申告分離課税のいずれかを選択できます(措法8の4①②)。

 ただし、上場株式等の配当等に係る利子所得(特定公社債の利子、公募公社債投資信託の分配金等)は総合課税を選択できず申告分離課税のみ選択可能です(措法8の4①)。

 上場株式等の配当等に係る配当所得は総合課税とし、上場株式等の配当等に係る利子所得は申告分離課税とすることはできます。

事例

(例)特定口座(源泉あり) 配当・利子100万円 譲渡益200万円
   一般口座       譲渡損100万円

 特定口座(源泉あり)内の譲渡益200万円を申告すれば、一般口座内の譲渡損100万円と相殺し還付されます。配当・利子100万円については、申告不要とすることができます。

特定口座(源泉徴収あり)内の売却損を確定申告する場合の注意点

 特定口座(源泉徴収あり)内の売却損については、確定申告義務はありませんが、確定申告により、同一年に当該特定口座外で生じた上場株式等グループの売却益・償還益や申告分離課税を選択した上場株式等グループの配当等・利子等と通算することにより、税金の還付等を受けることができます。

 ただし、その場合は、その売却損が生じている特定口座(源泉徴収あり)で受入れた配当等・利子等のすべても併せて申告する必要があります(措法37の11の6⑩)。

 つまり、特定口座(源泉徴収あり)内で上場株式等の配当等と譲渡損失とが損益通算されている場合において、その譲渡損失を申告するときは、その配当等については申告不要制度(措法8の5①②)が適用できないため申告が必要となります。

 譲渡損失を重複して利用させないためです。

 この場合において、上場株式等の配当等に係る配当所得については、総合課税又は申告分離課税のいずれの方法も選択することができますが、上場株式等の配当等に係る利子所得については、総合課税を選択することはできません(措法8の4②)。

 なお、特定口座年間取引報告書において、譲渡損失と配当等が損益通算され、納付税額0円と記載されている場合は、申告しても還付されません。確定申告書で損益通算前の配当等に係る源泉徴収税額を差引所得税額から控除することはできないからです。

事例-「特定口座(源泉あり)内の譲渡損、配当、利子」及び「一般口座の譲渡益」がある場合

(例1 税額計算なし)
 特定口座(源泉あり) 上場株の配当等150万円(配当130万円・利子20万円) 上場株の譲渡損△110万円
一般口座の上場株の譲渡益100万円

 この場合、特定口座(源泉あり)については申告不要を選択できますが、一般口座の上場株の譲渡益100万円は申告をする必要があります。
 一般口座の上場株の譲渡益100万円と特定口座(源泉あり)内の上場株の譲渡損△110万円を申告して通算する場合は、上場株の配当等150万円(配当130万円・利子20万円)も申告する必要があります。口座内の計算はリセットされます。
 上場株の配当130万円を申告する場合、総合課税(配当控除可能)を選択することができますが、その場合であっても利子20万円は申告分離となり、上場株の譲渡益100万円と上場株の譲渡損△110万円を通算した残りの△10万円と通算し、結果、利子は10万円(20万円-10万円)となります。

(例2 税額計算あり)
 特定口座(源泉あり) 上場株の配当150万円 上場株の譲渡損△50万円 口座内徴収税額20万円(復興税除く)
一般口座の上場株の譲渡益100万円

 この場合、特定口座(源泉あり)については申告不要を選択できますが、一般口座の上場株の譲渡益100万円は申告をする必要があります。
 一般口座の上場株の譲渡益100万円と特定口座(源泉あり)内の上場株の譲渡損△50万円を申告して通算する場合は、上場株の配当150万円も申告する必要があります。口座内の計算はリセットされます。
 一般口座の上場株の譲渡益100万円と特定口座(源泉あり)内の上場株の譲渡損△50万円を通算した譲渡益50万円に対して10万円(復興税除く)の税額がかかります。
 次に、上場株の配当150万円を申告分離課税で申告した場合は、30万円(復興税除く)の税額がかかりますが、特定口座(源泉あり)内で20万円が既に徴収されているので、結果、10万円(30万円-20万円)の追加税額となります。
 結果、確定申告時に20万円(10万円+10万円)の納税となります。

特定口座(源泉あり)において生じた所得又は損失の金額を上場株式等に係る譲渡所得等の金額に算入したところにより確定申告書を提出した場合

 特定口座(源泉あり)において生じた所得又は損失の金額を上場株式等に係る譲渡所得等の金額に算入したところにより確定申告書を提出した場合には、その後において、その納税者が更正の請求をし、又は修正申告書を提出する場合においても、その所得又は損失の金額を当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上除外することはできません(措通37の11の5-4)。

 例えば、 特定口座(源泉あり)内の所得を申告して還付を受けたが、国民健康保険料の負担額が大きいので 特定口座(源泉あり)の所得を除外して修正申告書を提出するようなことはできません。

特定口座(源泉あり)において生じた所得又は損失の金額を上場株式等に係る譲渡所得等の金額から除外(2以上の源泉徴収選択口座のうち一部を除外した場合を含む。)したところにより確定申告書を提出した場合

 特定口座(源泉あり)において生じた所得又は損失の金額を上場株式等に係る譲渡所得等の金額から除外(2以上の源泉徴収選択口座のうち一部を除外した場合を含む。)したところにより確定申告書を提出した場合には、その後において、その納税者が更正の請求をし、又は修正申告書を提出する場合においても、その口座内の所得又は損失の金額を当該上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上算入することはできないと解されています(平成18年5月30日裁決・東裁(所)平17第188号、平成30年8月29日裁決・大裁(所)平30第12号、令和3年9月2日裁決・関裁(所)令3第4号、新潟地裁令和4年12月14日判決・令和4年(行ウ)第7号)。

 例えば、特定口座(源泉あり)内の所得を申告せず、医療費控除のみの申告をしたが、 特定口座(源泉あり)内の所得を申告した方が還付額の多いことが後から分かったとしても、申告不要制度を選択したことになるため、更正の請求はできません。

平成18年5月30日裁決(東裁(所)平17第188号)要旨

(1)事実等

 本件は、請求人Xが、平成16年分所得税の確定申告を行った後、同年中に生じた源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡損失について、措置法37条の12の2(上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除)1項の適用を受けるための更正の請求をしたところ、原処分庁が、繰越控除の特例の適用はないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことに対し、Xがその取消しを求めた事案である。

(2)裁決要旨

① 措置法37条の11の5第1項によると、源泉徴収選択口座を有する居住者のその年中にした源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡に係る年分の所得税については、納税者の選択により、源泉徴収選択口座において生じた上場株式等の譲渡による所得の金額又は損失の金額を株式等の譲渡所得等の金額又は譲渡損失の金額から除外して、その年分の確定申告を行うことができる旨規定されている。

② 納税者が確定申告する時点において、源泉徴収選択口座で生じた上場株式等の譲渡による所得の金額又は損失の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額(譲渡損失の金額)に含めて確定申告をするか、それを除外して確定申告をするかは、納税者の選択に委ねられていることから、源泉徴収選択口座において生じた当該所得の金額又は損失の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額(譲渡損失の金額)に含めずに確定申告をした場合には、その後において、更正の請求又は修正申告をするときにおいても、当該所得の金額又は損失の金額を当該株式等に係る譲渡所得等の金額(譲渡損失の金額)の計算上算入することはできないと解される。

③ Xは、本件損失の金額について、株式等に係る譲渡所得等の金額(譲渡損失の金額)から除外するかしないかということについて、措置法37条の11の5第1項の規定に従い、本件損失の金額を除外したところにより確定申告することを選択したものと認められる。したがって、本件においては、確定申告後において、株式等に係る譲渡所得等の金額(譲渡損失の金額)の計算上、本件損失の金額を算入し更正の請求又は修正申告をすることはできないことから、株式等の譲渡損失の金額は生じず、本件繰越控除の特例の適用はない。

特定口座(源泉徴収選択口座)内保管上場株式の譲渡所得(損失)について更正の請求が認められないとされた事例-平成30年8月29日裁決(大裁(所)平30第12号)(棄却)

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人Xが、源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額に含めずに所得税等の確定申告をした後、当該特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額に含める旨の更正の請求をしたところ、原処分庁が、当該確定申告が「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当しないなどとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたため、当該処分の取消しを求めた事案である。

(2)裁決要旨(請求棄却)

① 居住者が上場株式等を含む株式等の譲渡をした場合の当該株式等に係る譲渡所得等については、分離課税の対象として確定申告をすること(申告分離課税制度)が原則であるが(措置法37条の10①。措置法は平成25年法律5号による改正前のものであり、以下、同じ。)、その例外として、居住者が有する源泉徴収選択口座において生じた特定口座内保管内の上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額又は譲渡損失の金額については、その居住者の選択により、その年分の所得税等について、上場株式等に係る譲渡所得等の金額に含めないこと(申告不要制度)が認められている(措置法37条の11の5①)。したがって、措置法37条の10第1項及び37条の11の5第1項は、申告分離課税制度及び申告不要制度の適用を受けるか否かの選択を納税者に委ねたものと解される。

② 本件は、Xが、源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上含めずに所得税等の確定申告をした後、当該特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上含める旨の更正の請求をしたところ、原処分庁が、当該確定申告が「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当しないなどとして、当該更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知処分をした事案である。

③ 申告分離課税制度の適用を受けることを選択しなかったことは、それがXの主張するとおり当該制度を知らなかったこと(法の不知)に起因するものであったとしても、「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったこと」に該当しないから、本件更正請求は、通則法23条1項3号の要件を満たすものではない。

特定口座(源泉徴収選択口座)内の配当所得及び譲渡所得の各金額を確定申告書に記載しなかったことについて更正の請求が認められないとされた事例-令和3年9月2日裁決(関裁(所)令3第4号)(棄却)

(1)事案の概要

 本件は、審査請求人Xが、源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額を含めずに所得税等の確定申告を行った後、還付金の額に相当する税額が過少になっているとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、Xが原処分の全部の取消しを求めた事案である。

(2)裁決要旨(請求棄却)

① 確定申告をする時点において、措置法8条の5第1項各号に掲げる配当等に係る配当所得の金額を総所得金額又は上場株式等に係る分離配当所得の金額に含めるか否かを、また、源泉徴収選択口座において生じた特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額に含めるか否かを、納税者の選択に委ねたものであり、いずれを選択しても、それぞれの規定に従って所得税等の額が適正に計算されている限り、税額等の計算に誤りのない適法な申告といえる。

② 本件確定申告書には、配当所得及び譲渡所得の各金額の記載がなかったことからすると、客観的にみれば、Xが、確定申告において配当所得及び譲渡所得の各金額を含めて申告することを選択しなかったものと認められる。

③ 本件配当所得は、措置法8条の5第1項に規定する配当所得であるから、配当所得の金額を総所得金額又は上場株式等に係る分離配当所得の金額に含めていない確定申告も、同項の規定に従った適法なものと認められる。また、本件譲渡所得は、源泉選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡によるものであり、措置法37条の11の5第1項所定の要件を満たしているから、譲渡所得の金額を株式等に係る譲渡所得等の金額に含めていない本件確定申告も、同項の規定に従った適法なものと認められる。

④ 以上によれば、Xがその選択により配当所得及び譲渡所得の各金額を確定申告書に記載しなかったことは、通則法23条1項3号に規定する「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」に該当しない。

投資信託に係る配当所得及び源泉徴収選択口座において生じた譲渡所得等の金額を除外して確定申告を行った後には、それらの所得を加えて更正の請求(還付請求)をすることができないとされた事例-新潟地裁令和4年12月14日判決(令和4年(行ウ)第7号)(棄却)(控訴)

(1)事案の概要

 本件の事案の概要は、次のとおりである。

 原告Xが、投資信託に係る配当所得及び源泉徴収選択口座において生じた譲渡所得等の金額を除いて所得税等の確定申告(還付金3万6807円)を行った後、還付金の額に相当する税額が過少になっているとしてそれらの所得(及び源泉徴収税額)を加えて更正の請求(還付金21万8955円。以下「本件更正の請求」という。)をしたところ、処分行政庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、その取消しを求めた。

(2)本件の主な争点

 本件更正請求が国税通則法(以下「通則法」という。)23条1項3号の要件を満たすか否かである。具体的には、投資信託に係る配当所得及び源泉徴収選択口座において生じた譲渡所得等の金額を除いて所得税等の確定申告を行った後、還付金の額に相当する税額が過少になっているとして更正の請求ができるか否かである。

(3)判決要旨(棄却)(控訴)

① 配当等に係る申告不要制度(租税特別措置法8条の5第1項)は、主として一般大衆投資家である中堅所得者層に利益を与え証券市場に資金を流入させる趣旨により設けられた制度であり、また、譲渡所得等の申告不要制度(同法37条の11の5第1項)は、平成15年1月1日からの個人の株式譲渡益課税の申告分離課税への一本化に伴い、個人投資家の確定申告等の事務の負担の軽減に配慮する観点から設けられた制度であると解される。
他方、本件申告不要制度の適用を受けずに、申告から除外することができる配当所得、譲渡所得等及び譲渡損失の各金額を含めて確定申告した場合の方が、損益通算や損失の繰越控除の適用により納税者に有利な場合もあることからすれば、本件申告不要制度においては、同制度の適用を受けるか否かの選択は、納税者の自由な選択に委ねられているというべきである。

② Xは、確定申告に当たって、一旦選択すると変更することができないということを知らなかったものと一応認められるが、本件申告不要制度の存在自体を認識した上で、配当所得、源泉徴収選択口座内譲渡所得等及び譲渡損失を除外して確定申告をすることを選択したことが認められるのであって、Xがした確定申告は、通則法23条1項3号及び同項1号が更正の請求をすることができる場合として規定した「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」のいずれの場合にも該当しないというべきである。

③ Xは、本件申告不要制度を適用して還付申告した後でも、配当所得及び源泉徴収口座内譲渡所得等を加えて還付申告をやり直すことができると錯誤に陥っていた旨主張するところ、証拠及び弁論の全趣旨によれば、Xが上記錯誤に陥っていたことは一応認められる。
しかしながら、Xが主張する錯誤とは、結局のところ、本件申告不要制度の選択を確定申告後にやり直すことができるという誤解(手続についての誤解)にすぎず、確定申告の内容自体、申告不要制度の適用を前提とした場合に何ら税額の計算に誤りがないのであって、申告不要制度の趣旨等からすれば、Xが主張するような錯誤によって更正が認められるとすると、課税の公平の観点や租税関係の早期安定に反するというべきであることからすれば、Xが上記錯誤に基づいて確定申告を行ったと一応認められるとしても、そのことが、通則法23条1項3号及び同項1号のいう「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」又は「当該計算に誤りがあったこと」に該当する余地はないといわざるを得ない。

④ したがって、本件更正請求は、通則法23条1項3号の要件を満たさない。